今回は貴重なマンボウの写真を頂きましたので、それをご紹介しながら新たなマンボウの可能性についてお話したいと思います。
(あくまで私の勝手な推測なので、皆さんも一緒に考えながら楽しんで下さい)
まずはその貴重なマンボウの写真をご覧いただきましょう。左の写真が小笠原諸島で撮影されたマンボウです。
なんと美しい海、そして日の光を浴びながら優雅に泳ぐマンボウ・・・。
注目すべきは体表の模様。これまで我々が見てきたマンボウの模様とは全く違うものですね。
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小笠原のマンボウ |
日本周辺に出現するマンボウ |
※・・・この小笠原マンボウの写真は無断転写、無断使用を禁じます。
小笠原のマンボウの方が色が鮮やかでまだら模様がはっきりしていますね。白と黒のコントラストが非常に綺麗で何となくシマウマを連想してしまいました。
我々がこれまで見てきたマンボウは体色は全体的にグレーから銀色をしており、一般的に背中の部分と背びれ・臀びれが濃い色をしています。まだら模様はうっすら見られることもありますが、色は薄いグレー色をしておりほとんど目立ちません。この違いは単なる個体差なのか、それとも別個体群のマンボウなのか?亜種あるいは別種のマンボウなのか?この場ではその答えにお答えすることは出来ませんが、一つ言える事は、私の知る限りではこの小笠原のマンボウのような模様を持つマンボウは日本列島沿岸で漁獲されていないということです。
小笠原諸島は日本列島(東京)から南南東約1000kmの太平洋上にある島々で、日本周辺に出現するマンボウが回遊しているであろう黒潮ルートからは外れた場所にあります。小笠原諸島のどの辺で撮影されたマンボウなのかは残念ながら不明ですが、前文に記述したように明らかに日本列島、そして黒潮から外れたはるか南で撮影されたマンボウなのです。
これは一体どういうことなのでしょうか?考えられることは「小笠原のマンボウは黒潮に乗って回遊をするグループとは別のグループのマンボウである可能性がある」ということです。以前、日本近海に頻繁に出現する1m前後のマンボウ(グループB)と関東・東北沖に出現するマンボウ(グループA)は別の集団であることをお話しました。要はグループBのマンボウが成長するとグループAの巨大マンボウになるわけではないのです。
少々難しい話になってしまったので、これまでのお話を間単に振り返りながら、小笠原マンボウの可能性について探ってみましょう。
注…図のマンボウの分子系統樹には「クレード」と表記していますが、このページでは「グループ」と表記します。ここでは(クレード=グループ)と思っていただいて結構です。
これまで
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成長すると |
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これまでは日本周辺に出現するマンボウ属はマンボウ一種だと考えられていたため、当然、日本周辺に出現する1m前後の小型マンボウと関東・東北沖に出現する巨大マンボウは同じ集団だと考えられていた。
しかし、DNA解析を行ってみると日本周辺に出現する1m前後の小型マンボウと関東・東北沖に出現する巨大マンボウは遺伝的に大きく離れていることが判明!(マンボウの分子系統樹参照)
この2種のマンボウは全く別の集団であった。 |
この説は間違いであることが判明 |
私の研究後
グループB |
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成長すると |
見つからない |
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上記の2種のマンボウは別の集団であったため、便宜上、巨大マンボウの集団を「グループA」、小型マンボウの集団を「グループB」と呼ぶことにした。
この2種のマンボウが別の集団であることはわかった。しかし、グループBのマンボウが成長した巨大マンボウは見つからないし、グループAの巨大マンボウの小型タイプも見つからない。これってどういうこと?
もしかして・・・
@グループBの小型マンボウは巨大化しない(これ以上大きくならない)マンボウなのでは?
AグループAの巨大マンボウは黒潮に乗らないルートを持っているマンボウなのでは?
BあるいはグループAの巨大マンボウはゴウシュウマンボウ(南半球のみに生息するマンボウ)で、南半球から小笠原ルートを通ってやってくるのでは?
C大西洋・インド洋など他の海域から流れ着いた漂流マンボウなのでは?
などなど様々な仮説を立てることが出来るが、サンプル数が少なく、どの仮説も証明できない状態。とにかく、海外を含む色々な場所のマンボウのサンプルが必要なのだ。 |
見つからない |
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成長すると |
グループA |
境港の巨大マンボウ出現後
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成長すると |
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平成16年(2004年)11月18日に、島根県邇摩郡温泉津町の沖で「まき網」によって水揚げされた巨大マンボウが調査の結果、グループBのマンボウであることが発覚!@の仮説を否定する結果となった。しかし、グループAの巨大マンボウとグループBの巨大マンボウは見た目の形から色から全然違う。
雌雄で外見が違う場合も考えられるが、これらのグループAとBの巨大マンボウは両者とも雌(メス)であった。
そして、相変わらず見つからないグループAの小型マンボウ。もしも、黒潮に乗って日本周辺にやってくるのであれば見つかってもおかしくないのだが・・・。グループAの小型マンボウは一体どこにいるのだろうか?
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グループB |
見つからない |
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成長すると |
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グループA |
小笠原マンボウから仮説を考えてみる
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成長すると |
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もしもこの小笠原マンボウがグループAの小型マンボウだとしたら、という仮説を立ててみよう。
「グループAの巨大マンボウが関東・東北沖でしか出現しないのは、黒潮ルートを通らず、この小笠原マンボウが出現する小笠原ルートを通ってその海域に向かっているからではないのか?そして、この小笠原マンボウこそ、グループAの小型マンボウである。」
という仮説はどうだろう?
この小笠原マンボウとグループAの巨大マンボウの両者が日本列島周辺で見つからないのは、小笠原ルートを通ってるから、ということで納得がいかないだろうか?
残念ながら、これも仮説の域を出ない。
この小笠原マンボウのDNAが入手出来ればすぐに分るのだが、今回は写真のみ。これからのマンボウ研究には小笠原マンボウのデータが欠かせないのだ。
(実は後輩がもう小笠原で獲れたマンボウの肉片サンプルを手に入れてたりもするのだが、この小笠原マンボウかどうかは不明。もしかしたら小笠原にもクレードBの普通のマンボウもいるかもしれない。) |
グループB |
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成長すると |
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もしも小笠原マンボウがグループAだとしたら? |
仮説を交えてお話してきましたが、この仮説も証明できないし、穴だらけ。
そもそも、小笠原マンボウとグループAの巨大マンボウを見比べても体表の模様は全然違いますよね(成長の過程で消えてしまうことも考えられますが)。
そして、この小笠原マンボウが関東・東北沖にたどり着くまでにグループAのような巨大になるとも思えません。仮にそのままの大きさで関東・東北沖にたどり着くのだとしたら、とっくに日本列島沿岸で捕まっていたでしょう。
だとしたら、この小笠原マンボウは一体何処から来て、日本列島沿岸ではなく何処へ向かっているのでしょう?それとも、日本列島沿岸にはたどりついているが、ものすごく数の少ない希少なマンボウだから見つからないだけ?それとも、最初に書いたように単なる個体差で実はグループBと同じマンボウ?
それとも、それとも・・・
考えたらキリがないし、考えれば考えるほどわからなくなりますね。でも、考えるのは楽しいし、考えることは「螺旋」。ぐるぐる回りながらも少しずつですが答えに近づいているのです。この小笠原マンボウの謎が解ける日も必ず来るでしょう。また情報が入り次第、皆さんにお知らせしますね。
それでは今回はここまで。
最後に、小笠原マンボウの写真を見ながらお別れとしましょう。大洋をゆっくりと優雅に泳ぐ未知のマンボウ。
君は一体何処から来て何処へ向かっているの・・・。皆さんも彼と一緒に泳いで考えてみてください。
それでは。
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※・・・以下の小笠原マンボウの写真は、無断転写、無断使用を禁じます。
太陽の光を浴びながら優雅に泳ぐマンボウ
何処へ行くんだろう?
ボクも一緒に連れて行ってくれないかな・・・
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